そんなこんなで、このわたくしめがそのターゲットにされたのもそんな少し浮足立った時やったわけです。
日本のプラットフォームでも時折あるかと思うのですが(特に各駅停車待ってる時!)、ホームの端っこの方で待っていたら思ったよりも車両が短く、目の前を車両がそのまま通過して先の方でとまりおったわけです。ホームに入って来た時の減速の具合からなんか嫌な予感がしたので、完全に目の前を通過する前に、自分の判断が誤っていたことに気づき、とりあえず通過しかけの車両をおっかけて停車位置まで走ったわけですが、その走る姿に条件反射的に子供らも走って来たのに気付いたので、最後尾一つ手前の乗車口から子供らを先に乗せたわけです(何故か嫁は余裕をぶっこいて歩いてきたため、最後尾の乗車口から乗車)。
で、子供らを乗せてすぐに私が乗ろうとしたのですが、その一瞬のすきをついて、女子高生ぐらいの少女3名が割り込んできよったわけです。まぁ、海外でもこういう割り込みはたまにあるので、とりあえずレディファーストという意識もあり、先にその少女3名を乗せてから自分も乗車しようとしたわけですが、なんと最初に乗った少女が、乗車口から車内に入ったすぐのところにある、床から天井まで突き刺さってる手すり棒の真正面に乗車口の方を向いていきなり陣取りよったわけです。こんなとこ立たれると邪魔でしゃあないわけなのですが、なんとそれと同時に、残りの2人の少女がその棒少女の左右に陣取りまさに「人壁」を作りよったわけです。しかもこれを無茶苦茶ナチュラルにやりよるわけです。全然違和感なし。
ところが、こうなると私が車内の奥に進めません。車内の座席はほぼ埋まっているものの、立っている人は少なく結構すいてるのに、なぜか私の前に立ちはだかりよるわけです。その時、乗り込んできた私の真正面に結果的には陣取る形となった「棒少女」の上着が私の首からかけているポーチにかかったのは自覚はしていたのですが、それよりも何よりも、少し下がってくれたら通れるところを完全に人壁を作りよったため、少女らとの距離感が無茶苦茶近く、且つ、先に乗った子供らは最後尾から乗った嫁のところに行ってるのが分かったため、何度か私もそちらへ進もうとするわけですが、無茶苦茶ナチュラルに行かせまいとしよるわけです。ほんまマヌケな話、この段階でも私はまだ気づかず。で、らちがあかんので、「ソーリー」と断りつつ半ば確信犯気味に、私の右斜めにいた少女を突き飛ばす形で奥に一歩進んだ瞬間、その3人少女はキャッキャ言いながら地下鉄を降りていきよったわけです。
この時点で初めてふと自分の首からぶらさがるポーチを確認するとファスナーが少し開けられてることに気づいたわけです。多分ここまでの時間およそ5秒ぐらいやと思うのですが、ま、未遂やったものの、あまりの華麗さに一瞬呆気にとられつつ、とりあえず、嫁のところにたどり着くと、嫁曰く、その5秒間くらいの間、乗ってる客はみな私の方を見ていたで、と。つまり私以外の乗客は皆気づいとったわけです。ここに至ってようやく己のマヌケさにムカついてきたのですが、と同時に、ま、あれは実際ターゲットにされてみんことには気づかんわな、と自分を納得させ、次は絶対に事前に察知したろと思ったわけです。
すると嫁曰く「どんな人が怪しいかわかってきたかも」と。ポイントは「乗ってる人の目見ることや」と。確かにイタリアの地下鉄ではやたらとガン見してくる人が男女問わず多いわけです。あのガン見にはいろんな意味があるんやな、と。嫁曰く、「日本人はシャイでよっぽどアホなナルシスト以外あんまりマジマジと人の顔見んやろ?」と。「それがカモにされる理由ちゃうか?」と。「なるほど」と妙に納得した私はその後、ひたすら車内にいるいろんな人の目を見るようにしたのですが、確かにそうすると、結構色んな人と目が合うわけです。目が合うということは向こうもこちらを見ているということですよね。用心用心。
と、そんな用心モードに入って間もなく、突然嫁が「あ、あれ、アヤシイ」と。
見ると向こうから我々の方めがけて母と中学生ぐらいの少女の二人がこちらに歩いてくるわけです。確かにオカンの眼光が笑えるぐらいに鋭く、明らかに「自分、カタギとちゃうやろ!」と内心突っ込みつつも、ふと見るとなんと座席に座っている他の乗客もほぼ全員がその歩いてくる母子をガン見してるわけです。「いよいよ、これはホンモノや!」と思っていると、なんとその母子が我々の真横に来て立ちよったわけです。
「またかい!」 と心の中で突っ込みながらも、嫁のアドバイス通り、私の真横に陣取った女子中学生の方に体の向きを変えて、まぁ日本でやったらほぼ「変態扱いで捕まるやろ」レベルで少女の横顔をガン見し続けたわけです。で、流石にそうやってカモから逆に思いっきり顔覗き込まれてガン見されると何もできず、少女は顔引きつらせながらも一切私とは視線を合わそうとせずひたすら真正面を見据え、一方、計画が失敗に終わったことを察知した私の正面にいた眼光鋭いオカンはその場に座り込みよるわけです。この母子、次の駅に着いた瞬間に降りていきはりましたが・・・。
この話をしたところ、TESOL仲間の熱血教師H氏から「そもそもなぜたすき掛けのポーチを持つ必要があるのか?」という根源的なツッコミを頂きました。
それはパスポートの存在なのであります。私のポーチの中身はパスポート以上でも以下でもありません。それしか入っていないのであります。ところが、これがあるがために私は常にたすき掛けの小さいポーチみたいなカバンを首からぶらさげることになり、世の犯罪者どもにここにお宝ありまっせ~と堂々と宣言しながら歩く羽目になるわけです。先ほどのスリ少女集団に出会った時もその少女軍団はカバンの口をでっかく開けたまま無防備極まりない様子で乗車した嫁ではななく、何のためらいもなく私にターゲットを定めてきたわけですから。彼女らは恐らく、切符を買うあたりから既にこちらをマークしとったのでしょう。切符を買っているのは私。家族の分の切符を全て持っているのも私。背中の大きなバックパックとはわざわざ別にポーチを首からかけてるわけですから、ま、常識的に考えて、ターゲットは背中のバックパックでも不用心極まりない嫁のショルダーバッグでもなく、私の首からぶら下がっとるその青いポーチや~!と。ふと、犯罪者どもの心理を逆手にとって、大事そうにポーチを首からかけていながらその実、貴重品は全部背中のバックパックに入れてポーチの中は大量のうまい棒詰め込んどいたろかなとか思ったりするわけですが、なかなかそれを実行にうつす根性もないわけです…(-_-;)